大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)172号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

第一審判決は、被告人が「取引高税印紙の実際納税額が五万円以上の人はそれに関する帳簿を全然作らずにやればよい、すると税務署ではそれを違反として挙げても帳簿を作つてないので証拠がなく、五万円以上の罰金には処せられない、罰金で済ます度胸のあるものは左樣にやれ、課税所得が三十万円である人は追徴及加算税が十五万円程度になるが右の手段に依ると五万円の罰金で済むから十万円助かる、現に二軒屋町の或ラムネ屋に左樣な例がある」という趣旨の説話をした事実を認定しているのであつて、原判決は、右のような認定が採証法則に違反し事実の誤認であるという、控訴趣意の詳細な論旨に対し、採証法則違反、事実誤認はないとして、簡單にこれを排斥しているのである。しかしながら、取引高税法(昭和二三年九月一日施行、昭和二五年一月一日廃止)によれば、取引高税の課税標準は取引金額であり、その税率は取引金額の百分の一である。従つて年五万円以上の取引高税を納付すべき者は、年間五百万円以上の取引があるものでなければならないから、第一審の判示するような意味において、被告人が脱税を煽動する対象とは考えられない。さらに、課税所得が三十万円の人は追徴加算税が十五万円程度になるというのも、取引高税の話とするとまつたく意味をなさない。なぜなら取引金額が三十万円であれば、取引高税は三千円にすぎず、追徴税及び加算税が合せて十五万円ほどになるということはありえないからである。そうして、いやしくも取引高税を納める立場にあり、その税率くらいは心得ているはずの人々に対し、右のような全然桁ちがいの話をして脱税を煽動するというようなことは、普通には到底考えられないことである。第一審判決の援用する証人淸水正己に対する裁判官の尋問調書中には、被告人が右のような話をしたという供述が記載されているけれども、記録にあらわれている他の証拠を精査檢討すると、右の証言はその場における色々な話(所得税の大口脱税者の非難など)の断片を不当につなぎ合せたものと見られるのであつて、同人も第一審公判廷では証人として右のような供述をしていないのであり、実際には被告人がそのような趣旨の話をしたものとは認められない。要するに第一審判決の前記事実認定は明らかに実驗則に背き、事実に即しないものと認められるのであつて、この認定を支持した原審の判断には重大な事実の誤認があるものといわざるをえない。

(説明)

判旨に対しては相当異論もあると思われるが、兎も角最高裁判所の事案に対する一つの態度を示すものとして極めて注目に値するものと考へられる。本判決は、判例集には登載されないことに決定しているのでこゝに掲げて参考に供する。

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